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『今ここにいるぼくらは』 (川端裕人 集英社 税込1,785円 )
 一人の少年の成長を7つの短編で描いた作品ですが、成長モノにありがちな編年体ではなく、小学校6年間の日常の一コマを切り抜いてバラバラに並べています。成長の過程を「流れ」でとらえさせるのではなく、一つの出会いや出来事が主人公に与えた影響を「独立した」ものとして描きたかったのでしょう。
 小1の夏に川の源を目指し、小6で社会から落後した王子様と出会うまでに主人公の博士クンが体験した出来事が一つひとつの風景のように描かれているのが心地よくて、連作の画集を見ているように感じました。
 サンペイ君と池の主を釣った小5の秋、オオカミ山のオニバと出会い「死」と直面した小4の夏など魅力的な作品が含まれていて、要チェックです。
『決断力』 (羽生善治 角川Oneテーマ 税込720円)
 本書は、勝負の世界に身をおいた一人の天才棋士が考える「戦い方」についての指南書みたいなものです。決断力や集中力について説いた本は星の数ほどあって目新しさはありませんが、最高峰に立つ人間だからこその説得力、勝ち負けが明確な世界を題材にしたこと、さらに話しことば風のわかりやすい文体が人気の秘密です。
 鍛練を重ねてとぎすませてきた感覚としての「直感はその7割が正しい」というくだりで「なるほど」と感心し、「継続できる情熱や気力こそが才能だ」というところでは「その通り!」とヒザをたたいて共感。
 将棋という枠を越えてビジネスや勝負事全般につながる普遍的な真理を将棋というわかりやすいフィールドを舞台に棋士の視点で語っている本書は、説明的文章の格好の素材です。
※「定番」とは、ここ数年間毎年どこかの学校で出題されている現在の中高入試国語の「スタンダード」の意。
『父の詫び状』 (向田邦子 文春文庫 税込500円)
 言わずとしれた向田邦子の傑作エッセイ。気取らず、飾らない文体でつづられる文章。でも、随所にちりばめられている筆者のユーモアたっぷりのさりげない表現に思わず笑ってしまうことも。
 一家の大黒柱として威厳にあふれる(?)父親と、亭主関白の時代の家族をしっかりと支える母親をあたたかくえがく表題作の他、魅力的な短編が目白押し。ただし、基本的には、大人向けです。
『そこに僕はいた』 (辻仁成 新潮文庫 税込380円)
 初恋、喧嘩、読書、先輩、教師に関するエピソードなど、だれでも一度は経験する青春期の思い出を笑いと涙でつづった青春エッセイ。
 少年特有の微妙な心理を生き生きと描く短編は、新鮮でもあり、共感できることウケアイです。これまで、多数の中学校で出題されています。 「そこに君がいた」もオススメです。
『ホンモノの日本語を話していますか?』 (金田一春彦 角川Oneテーマ 税込600円)
 日本語研究の第一人者である著者が、日本語表現の特徴を外国語と比較しながら論じた作品。日本語表現の背後にある日本文化の奥深さを実感させてくれる作品であり、「言語」「比較文化論」として、入試素材文としては、格好の文章です。平易で読みやすい文章ですので、小学校高学年〜中高生に是非読んでもらいたい作品デス。
『小さな博物誌』 (河合雅雄 小学館文庫 税込880円)
 少年時代から里山で遊び、生き物たちに親しんだ世界的動物学者が綴る自然交遊記。
 自然の美しさ、命の不思議さなど、著者と自然や動物たちとの交流を物語仕立てで描いた作品です。
 また、四季折々の森に生きる動物、樹木、草花に想いを寄せて綴ったエッセイ集『森の歳時記』を併録。写真に見とれてしまうかも?
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